
がんとうまく付き合い
健やかに生きられる未来をめざし、
新しい免疫治疗の开発に取り组む。
医学部附属病院 助教 滝 真奈
2007年、京都大学卒業。産婦人科医。これまで田附興風会医学研究所北野病院、日本赤十字社和歌山医療センター、滋賀県立成人病センター(現 滋賀県立総合病院)、MDアンダーソン癌センターに赴任。2020年より現職。専門分野は卵巣癌をはじめとする婦人科腫瘍で、腫瘍免疫に着目した新たな治療法を研究している。京都大学創立125周年記念ファンド「くすのき?125」の2020年度採択者。採択テーマは「がんの上皮間葉転換を免疫治療で制御できるか」。
がんの悪化を抑える新しい免疫治疗を研究中。
私は卵巣がんなどの妇人科がんについて、「上皮间叶転换」と免疫の関係に着目して研究に取り组んでいます。
一言にがんと言ってもその性质は多种多様で、浸润や転移が起こりにくいタイプもあれば、起こりやすいタイプもあります。この浸润や転移が起こりやすい性质に関わっているのが上皮间叶転换、简単に言えば、ある意味“おとなしい”固形から“移动しやすい”アメーバ状へと『がん细胞の颜つき』が変わることです。それだけでなく、上皮间叶転换はがん细胞から身体を守る免疫细胞の働きを抑制する性质があることもわかっています。
これまでのがん治疗では、まずは手术や放射线でがん细胞自体を取り除いてやり、それと并行して抗がん剤を使うのが一般的でした。この3つの治疗に加えて、数年前から免疫治疗が取り入れられるようになってきています。免疫治疗は正常细胞を攻撃しないため、患者さんの身体への负担が比较的少ないことがメリットですが、今のところ効果が期待できるがんの种类が限られていて、とくに上皮间叶転换を起こすがんには効果が出づらいという课题があります。上皮间叶転换に対して有効な免疫治疗を确立することができれば、患者さんの负担を大きく軽减することにもつながります。
现在取り组んでいる研究では、子宫体部癌肉肿という悪性度の高いがんをターゲットに、上皮间叶転换が免疫抑制を引き起こす负のスパイラルを断ち切るべく、分子レベルでその仕组みを解明しようとしています。
产妇人科医として日々患者さんに向き合っている滝先生。写真は外来の诊察室にて。
実験室で研究に取り组む滝先生。
がんが「普通の病気」になる未来に向けて。
私は京都大学医学部を卒业后、产妇人科医として病院に勤务していました。多くの患者さんを诊ている中で、研究によって新しい治疗法を见つけることができれば、目の前の患者さんだけでなくより多くの人を救うことができるのにという思いが强くなっていったんです。疾病の中で、とりわけ多くの人の命に関わるのががんです。がんとは何かという根本を理解して、多くの人の助けになりたいと考えて7年前に大学院に进み、研究をはじめました。
现在、日本全体で约半数の方ががんを患い、3分の1の方ががんで亡くなっています。高齢化がさらに进むと、この割合はさらに大きくなっていくでしょう。がんで亡くなる场合、病気そのものの悪化に加えて、治疗による身体への负担も大きくなります。心身ともにつらい闘病生活のすえに亡くなられる方が多いのも事実です。
そこで私が考えているのが、『がんと共に生き、がんで死なない社会』の実现です。これまでのがん治疗は、がん细胞の根絶をめざす治疗が主流でした。しかし、免疫治疗によってがんの进行をコントロールできるようになれば、根絶はできなくとも、今のように深刻な病気ではなく、高血圧と同じような普通の病気のひとつにしていくことができると考えています。そうすれば、がんを抱えながらもやりたいことにチャレンジしたり、大切な人と过ごしたりする时间を延ばすことができ、多くの人がより充実した人生を送れるようになるでしょう。
がんとの共生を考えるようになったのは、私が研修医だった顷に先辈の医师からある话を闻いたことがきっかけでした。その先辈によれば、がん以外の病気で亡くなった方のご遗体を解剖してみると、肺などの臓器にごく小さながんが见つかるということがよくあったそうです。その方は别の病気で亡くなるまでの间、がんと共生していたと言ってもいいかもしれません。つまり、がんが小さいままで悪さをしなければ、生きていくうえで大きな支障はないとも言えます。
この话を闻いてから、何が何でもがん细胞を体内から追い出すという必要はないのでは、と考えるようになりました。がん细胞も元は自分の细胞で、加齢とともに自然に発生してくるものです。また、现在の根治をめざす治疗は、患者さんにとって大きな负担にもなります。がんも自分の身体の一部と捉えて、うまく付き合っていくという考え方があってもいいのではないでしょうか。
がんで苦しむ人がいなくなる社会をめざして、个别の治疗法だけでなく、がんそのものに対する理解を深めていきたいと考えています。
周囲に流されず淡々と、そして着実にものごとの本质に迫るブレない力。





