2021.03.31 WED
工学部6学科、工学研究科17専攻と、京都大学随一の规模を持つ工学。その大きさ、カバーする领域の幅広さを理解したうえでその伝统や独自性に迫りたいと、研究科长をはじめ様々な専门分野で活跃する研究者の声を集めた。研究教育理念とその特徴について概観した前编に続き、后编では京大工学における社会との结びつきにスポットを当てて见ていこう。
ソリューションをめざさない产学连携
工学という学问と社会との结びつきといえば、まず思い浮かぶのが产学连携だろう。国立大学が组织として产学连携に取り组み始めたのは1980年代后半のこと。民间との共同研究を进めるための窓口や研究シーズ集など体制整备を行い、地域とのネットワークを构筑していった。1990年代に入ると、科学技术立国を合言叶に国が产官学连携を主导し、経済政策の一环として积极的に推进するようになった。科学技术基本法、大学等技术移転促进法(罢尝翱法)、产业技术力强化法などの法整备が进み、2000年代から大学発ベンチャー设立の动きも活性化した。
京都大学はかつて产学连携の「嫌い」「苦手」な大学として通っており、それは社会に役に立つものづくり、エンジニアリングを追求する工学にあっても例外ではなかった。基本原理から究め、未开のフロンティアを追いかけることをよしとする学风は、结果とそのスピードのみを求めがちな产学连携となじまない部分も多かったからである。京都大学が民间との共同研究の窓口を担う组织をつくったのも2001年と遅かったが、そこからは产学连携が目的とするイノベーション创出をより促进する优れた手法の検讨を进め、近年では组织连携やグローバル连携など大规模连携を含めて他をリードする成果をあげている。
このうち大学と公司が「组织」対「组织」で向き合う组织连携は、ビジョンの共有や部局を超えた连携によるリソースの结集でイノベーションを加速させると期待されている手法だ。京都大学工学では、この组织连携を2005年という早い时期から取り入れた。次世代のセル生产を実现するロボット知能化技术について叁菱电机株式会社と连携、机械系3専攻に加えて他研究科からも参加する横断型の共同研究を进め、様々な成果を上げながら现在もなお拡张を続けている。大学侧の代表を务める工学研究科机械理工学専攻?椹木哲夫教授は、「成功の要因は、何を研究すべきかから产学が一绪に议论したことにある」と话す。议论から生まれたテーマに合わせ基础研究から実用化にも结び付く発展型の研究が行われ、研究者が缓やかに结びついていることがパートナーシップのカギとなっている。椹木教授は现在、この共同研究から発展した、熟练者の暗黙知を伝える支援のための础滨基盘技术の研究に取り组んでいる。
叁菱电机株式会社との产学连携を推する椹木哲夫教授
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工学部长?工学研究科长の大嶋正裕教授は、今后の产学连携について次のように语る。「现実に何が问题になっているのかを知る意味でも、产学连携は工学にとって非常に重要です。ただし、大学がやるべきなのは、他ではできない『时间がかかること』。产学连携においても、近视眼的なソリューションではなく、根本原理を突き止めたり、体系化によって新たなものを生み出すという役割を担っていきたいと思います」
このほか、2006年からキヤノン株式会社と连携し、医学、工学、情报学など分野を横断した10年にわたる长期プロジェクト「高次生体イメージング先端テクノハブ」では、工学研究科高等研究院に生体医工学研究部门を设置し、生体?医工融合コースの教育と结んだ人材育成を推进。京都大学における医工融合领域の充実?进化を后押しする事业となった。
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椹木哲夫教授の研究
共感し合うシステムで「机械と人间の共创」を実现
椹木哲夫教授が进めているのは、ものづくりの现场などで行われる熟练技能の継承を机械が支援するシステムの开発である。製造技术の自动化は进展しても、复雑さが要求される、たとえば新干线の先头车両の流线型の部分など人の手でしかつくれない工程は残る。中小公司では匠の技と言われる技术を持つ人の高齢化が进み若い后継者も圧倒的に不足しており、人から人へ翱闯罢で技能を伝えていくことが难しくなっている。
そこで、熟练者から若い世代へ技术を伝えていくために、人间ができる部分と机械ができる部分とをうまく组み合わせていこうというのが椹木教授らのアプローチだ。础滨や滨罢によって机械の知能化を进め、熟练技能者の伝える力、学习者の学ぶ力を拡张させるシステムを构筑していく。熟练技能の见える化、モデル化はもちろんのこと、机械が真似をしているのを见ながら学习者自身が改善できる点を见つけ成长していくようなインタラクションのあり方、サイバー空间を活用した伝承と学びなど、机械が人间のパートナーとなって人を育てあげていくという発想で研究を进めている。
础滨技术が进んでも、最终的に人间の代わりをすることはできないと言われている。人间と机械は互いに置き换えられることなく、互いに协力し合ういい関係を保ち続けて共创することが求められていく。人と机械はどこまで共感し、协働を进めていけるのか。これからの挑戦が楽しみな分野である。
人间ができる部分と机械ができる部分とをうまく组み合わせていくことで、教示者の教える力や学习者の学ぶ力を拡张させていく
社会に分け入って実践する工学
社会そのものをよりよい姿へとエンジニアリングするのも、工学の役割である。京都大学工学の中でも、国や社会の构造をソフト?ハードの両面から検讨する土木工学や社会工学、人の暮らしや地域?都市のあり方も含めてデザインする建筑学などの分野では特に、より多层な人々との连携や共创によって社会にコミットする研究が行われている。工学研究科都市社会工学専攻?藤井聡教授は、「社会工学分野は道路、河川、桥梁、地盘、财源、业者など幅広い対象を研究するため、自分の専门分野だけでは完结しないことに早くから気づきます。学びながら様々な専门分野と协働する素养を身につけていけるのが强みです」と话す。
2011年には工学研究科、人间?环境学研究科、防灾研究所による部门を超えたレジリエンス研究ユニットを开设、甚大な自然灾害や経済恐慌などの危机を乗り越えてしなやかに回復する地域や都市、国家の强靭さを研究してきた。それをベースに具体的な政策提言へとつなげた成果をふまえ、2016年にはレジリエンス実践ユニットとして再编成。研究成果を社会で実践するための幅広い活动を行っている。
藤井教授は、「工学は人や社会の“役に立つ”学问。その目的のために、学问の融合や研究分野の広がり、アカデミズム以外の人々も含めたコミュニケーションが大切」だと语る。「アカデミズムは、やっていることをメディアが取り上げてくれるのに任せておかないで、社会への働きかけや问いかけをもっと积极的に行っていく必要があります。ソクラテスだって、辻に立って人々に语りかけ対话をしたじゃないですか。こちらからコミュニケーションを取っていくことで存在感を高め、役に立つ工学を社会で実践するための回路を作りたいと思っています」
藤井聡教授は、アカデミズムと社会をつなげる重要さを説く
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一方、建筑学の分野にも、研究と実践とを平行して探究する研究者が多い。着名な建筑家で、その活动を通して建筑设计理论の构筑をめざす建筑学専攻?平田晃久教授もその一人だ。京都大学らしい建筑があるのかという问いに、平田教授は「あるかもしれない」と答える。「たとえば、黒川纪章先生、高松伸先生という京大出身のお二人の作品には强い个性が表れています。一见、标準的なものからの逸脱のように见えたとしても、长い时间が経ってからあれはこういうことだったのかと気づかされるような普遍性のある新しい考えのもとにつくられています。京大にある幅の広いものの考え方が、そうしたそれまでにないものを生み出す思考を育むのではないでしょうか」
平田教授自身は、建筑に「からまりしろ」という新たな概念を持ち込んだ。1本の木に鸟が巣をかけ、小动物がひそむことで自然の环境ができていくのと同じように、人间が様々にからまれる要素を建筑の中に用意する。それによって、生きた人间が活动することで生き続けていく建筑をめざしている。
京都大学出身の建筑家に普遍性への志向を感じると平田晃久教授
藤井聡教授の研究
社会と学术を往復して练る「国土强靭化」研究
藤井聡教授は、国土强靭化をテーマに幅広い研究を进めている。巨大灾害対策の研究では、防灾学、计量経済学の専门家と连携して南海トラフ地震の被害额の试算を行い、それまでの试算を大きく上回る被害金额とともに防灾対策や强靭化対策案、それによる被害减少効果などを政府に提案した。国土强靭化対策に力を入れる政治的な流れをつくる、一つの科学的根拠となる研究だった。近年では、新型コロナウイルス対策についての提案も、ウイルス学?医学の専门家とともにまとめ公表している。强靭化対策を支える财政政策として现代货币理论の研究を海外の研究者と进めるほか、人々の危机への対応や政治意识についての心理学研究など基础研究も行っている。
その一方で、科学コミュニケーションにも力を注ぐ。実践政策学分野の学术论文集の编纂や言论誌の编集、ラジオやテレビなどで冠番组を持つなどマスコミにも积极的に登场して社会への発信を続けている。藤井教授が意図しているのは、学术の知を世の中に広げ、社会で実践するための回路をつくることだ。情报があふれかえる现代の世の中で学术情报の発信を続けるためには、今あるメディアにバトンを渡すだけでは限界がある。学术が社会との往復をすることで知を进化させていくことと同时に、直接発信する机会を増やすことによって社会への影响力を高めていくことをめざしている。人や社会のよい形での変容に向け、新たなアプローチが続いていく。
平田晃久教授の研究
人とともに生きている「生命论的建筑」
商业建筑から集合住宅、公共建筑まで、平田晃久教授の建筑家としての守备范囲は広い。多様な作品群において一贯して追い続けているのは、生命论的建筑というテーマである。人间の活动も生物が行う活动の一种として见るとき、建筑は単なるモノではなく、その中で生きている人とともに生きている存在と考えることができる。そんな生命としての特徴を持った建筑をどのようにつくっていけるのかを、実际の设计を通して考え続けてきた。
公共性のある建筑が生きたものになっていく设计の方法论として挑んだのが、京都大学をはじめ京都の大学で建筑を学んでいる学生たちのシェアハウス「北大路ハウス」だ。学生たちは様々なアイデアを出して设计の一部を担当。つくって、住んで、レクチャーや展覧会も运営し、住み心地をよくするリフォームも行っている。集団の知性が小规模ながら公共性を持った建物にどのように反映されていくのか、一体化できるのかという実験でもある。
さらに平田教授は、规模の大きな公共建筑、群马県太田市の美术馆?図书馆の设计でも、细かなポイントを市民とのワークショップの场に投げながら决めていくという试みを行った。市民や行政、図书馆や美术馆の専门家などが分け隔てなく议论する场にしたことで、様々な気づきにあふれた空间になった。からまりしろもその分たくさん见つかったという。
生きていく建筑をつくりだす方法论は一つではない。その都度、その场所にしか建たないものを见极め、特有の豊かさを生み出していく平田教授の建筑に注目が集まっている。
地域に爱されるキャンパスに向けて
京都大学工学には、现在、学部?研究科を合わせて全学生数の4分の1を超える6200人以上が学んでおり、全学で最も规模の大きな组织へと成长している。1999年、吉田キャンパスの狭さを解消するためにすでに大所帯となっていた工学に白羽の矢が立ち、京都市西京区西山山麓の丘陵地に新キャンパスを建设して工学研究科を移転する计画が持ち上がった。桂キャンパスと名付けられた新キャンパスは2003年化学系、电気系専攻の移転で开校し、以来10年かけて吉田キャンパスにあった専攻の移転を进め、残るは材料工学専攻のみになっている。甲子园球场の27倍の広さの构内には施设?设备が机能的に配置され、移転によって研究环境は大きく向上した。テクノサイエンスヒルという爱称もあるヒルキャンパスからの眺めは素晴らしく、京都市街の中心部も见渡せる。しかし、交通の不便さや福利厚生施设の不足など桂キャンパス特有の问题のほか、学部?研究科が桂?吉田?宇治の3キャンパスに分散していることによる物理的?心理的距离の远さなど积み残された课题もあり、解决に向けた検讨が进められている。
桂キャンパス叠クラスターから临む京都市街地
2020年4月には桂キャンパス内に桂図书馆が新筑开馆された。最终的には蔵书数50万册を目标にする理工学系専门図书馆としての充実を図りながら、一般向けの科学系の本も集めて科学との出会いを提供し、地域の人も利用できる図书馆としての机能も高めている。主な利用者が研究者と大学院生のため、オープンラボ、リサーチコモンズ、グループ学习室など学外研究者や学生の协働の场と、ライティング支援、オープンアクセス支援などの人的サービスという両面からの研究支援も特长の一つだ。学外者に向けて京都大学工学の研究を発信する「桂の庭」展示など新しい试みも始まっている。
20年近くの歴史の中で、桂キャンパスの存在は徐々に周辺地域となじんできた。近年はキャンパス内にあるホールを会场に、地元公司と连携してクリスマスコンサートを开催するなど、地域との结びつきを深めている。大嶋研究科长は、新図书馆がさらに地域との协働を进化させるきっかけになると期待する。
「西京区は高齢化も进んでおり、若い学生たちがいることによる活性化を期待する声もいただいています。今后、京都大学の西の拠点として、地域のみなさんと一绪に爱される大学を创造していきたいと思います」
机能だけでなく芸术性や人间の情绪的な部分を取り入れた人に诉える技术、エネルギーや环境のことまで考えに入れたシステムとしての発想など、社会や人の未来を担う工学の挑戦は続く。大嶋研究科长は、「长期的なビジョンに基づいて、戦略的にフレキシブルに动けるような组织を実现していきたい」と京都大学工学のこれからを语る。真理?原理を究める伝统を强みに、新たな开拓者たちの活跃が期待されている。
京都大学桂図书馆开馆记念式典の様子
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- 组织连携など本格的な产学连携でイノベーションを加速
- 研究成果の社会実装や社会のコミュニケーションにも注力
- 新図书馆を拠点に地域とともにあるキャンパスを创造
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