2020.09.17 THU
物质の真理を究明する「多分野共同体」
京都大学化学研究所(以下、化研)は、1926年に设立された京都大学初の附置研究所である。学问の専门分化が进む现代、设立时のまま「化学」だけを冠した名称はシンプルすぎるようにも感じられる。事実、过去には「漠然としすぎている」という指摘を受けることもあったという。しかし、化学とは、自然と人がつくりだす多种多様な物质を研究対象とし、他の自然科学と连携して生活や社会を支える学问。化学を原点に90年以上にわたって物质の真理を究明し、幅広い领域にわたる课题解决に贡献してきた化研の姿势を、これ以上的确に表现する名称はないのかもしれない。
设立にあたっては、理学、工学、农学、医学など各研究科に所属していた化学系教员が协力した。以来、化学だけでなく物理学や生物学、情报学など、多くの分野を取り込みながら「多分野共同体」として発展、现在にいたるまで、异なるコミュニティの个性的な研究が融合?共存し、幅広い研究分野を拥するのが化研の大きな特色の一つとなっている。
また、设立理念「化学に関する特殊事项の学理及び応用の研究を掌る」には、「化学に関する特殊事项」つまり先駆的、先端的课题について、「学理及び応用の研究」つまり基础研究を重视しながら応用研究も积极的に展开するという意志が表れている。大学で応用研究を手掛けること自体がまだ珍しかった当时、基础研究の充実した成果を基盘にした戦略的な応用研究を志向するという新しい构想のもとに设置された化研では、化学に関する多様な课题に多分野が境界を越えて协力し自由阔达に研究することがめざされた。
「大学と产业界との连携もそれほど密ではなかった时代に、その桥渡しとなって社会が求める先端的な开発研究を活発に行いました。开発された製品によって得られた利益で研究所の运営を支える、いわゆるベンチャーラボのような存在でもありました。応用のみの成果を求める研究とは一线を画し、しっかりとした基础研究で土台を固めているからこそできる応用研究に向き合う姿势は、当时から现在に至るまで一贯して受け継がれています」と所长?辻井敬亘教授は话す。
化学研究所の歴史を解説する辻井敬亘所长
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ものづくりから遗伝子まで世界的な研究成果
化研は、その长い歴史の中で、数多くの业绩で学问と产业技术の発展に贡献してきた。戦前?戦中には、国产初の合成繊维ビニロンの开発、人造石油や合成ゴムの製法开発、高圧法ポリエチレンの製造、除虫菊成分の分析や合成などの成果があり、その多くは日本化学会が认定する化学遗产の认定を受けている。
化学研究所で製法が开発された「人造石油」
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戦后も、日本のものづくりを支える研究成果が続々と生まれた。1959年に开始した结晶化ガラスの基础研究から、滨贬クッキングヒーターのトッププレートに使われる结晶化ガラスが生まれ、のちにバイオセラミックス製人工骨の开発へと展开した。1963年に始まった酸化鉄微粒子研究からは、化粧品やオーディオ?ビデオテープ、磁気ヘッド、黒色トナー粉などが実用化された。以来、金属酸化物研究は対象物质、合成法とも多彩?高精密化が进み、色、磁性、超电导など多彩な分野で世界をリードしている。また、1980年代には、金属や酸化物などを人工的につくるための人工格子を世界に先駆けて作製し、その后、ハードディスクの読み取りに利用される巨大电気抵抗効果を示す人工格子の作製にも世界で初めて成功した。
幅広い科学の进展に役立つ电子顕微镜开発と応用研究でも大きな実绩を上げている。1968年に超高圧电子顕微镜を开発し分子の外形を撮影したのに続き、1974年には世界初の极低温超高分解能电子顕微镜を开発、1979年には初めて分子构造を示す原子像の撮影に成功した。また、1989年に、さらに性能の高い电子线分光型超高分解能电子顕微镜を世界に先駆けて开発した。2012年には従来困难とされていた有机分子中の炭素骨格の撮影にも成功した。
遺伝子解析の分野では、1975年、DNA塩基配列の解析方法を日本で最初に導入し、1981年には遺伝子組み換え実験を専門に行う日本初の核酸情報解析施設を設置して研究をリードした。1992年にはスーパーコンピュータ?ラボラトリーを設置し、国のヒトゲノムプログラムの中でも重点領域となったゲノム情報、ゲノムネットの拠点地としてゲノム研究を展開。生命科学と情報科学の融合分野バイオインフォマティクス研究用に、遺伝子やタンパク質、分子間ネットワークに関する情報を統合した世界有数のデータベースKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)を構築した。2001年にはバイオインフォマティクスセンターを設置し世界的な研究拠点として認知されている。
「バイオインフォマティクスセンター」は、计算机による生命科学知识の蓄积?获得のためのバイオインフォマティクス(生命情报科学)の世界的研究拠点
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5研究系と3センターで幅広い分野をカバー
近年注目されている研究としては、有机电子デバイスの高性能化に取り组む分子集合解析研究领域による、次世代太阳电池の开発がある。ペロブスカイトと呼ばれる结晶构造を持つ半导体材料を光吸収层に用いるペロブスカイト太阳电池は、材料を基板やフィルムに涂る印刷技术によって作製できるため、製造コストを大幅に低减することができる。エネルギー変换効率も高い期待の新技术だ。化研では、このペロブスカイト太阳电池の高性能化に向けて多くの课题をクリアし、他に先駆けて20%を超えるエネルギー変换効率を达成した。2018年には京都大学発のベンチャー公司、株式会社エネコートテクノロジーズを设立し、太阳电池をはじめとするデバイスの社会実装を进めている。
「こうした展开は、化研がこれまでに积み重ねてきたナノサイエンス、スピントロニクス、量子技术などの成果ともつながりが深いものです。その他にも、元素戦略や计测分野など、常にいくつもの特色ある基础研究が継続されています。それぞれの分野が融合して时代の先端をいく新たな成果を生み出しているところが化研の强みです」(辻井所长)
京都大学化学研究所では、エネルギー変换効率の高い「ペロブスカイト太阳电池」の研究を进めている
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强みをより発挥できるよう、研究体制の构筑にも心を砕いてきた。教授、准教授、助教がチームで研究を行う研究领域制を採用し、现在、30の研究领域を5つの研究系と3つのセンターに组织化している。5つの研究系で机能材料、ナノ材料、バイオ、环境、新基盘と幅広い分野をカバー、异なる専门分野の研究领域を结びつけて融合?连携を活発に进め、境界领域で新たな研究分野の开拓をめざしている。
また、3つのセンターは、基干领域の最先端研究アプローチが発展して生まれ、それぞれに化研を特徴づけている个性的な存在となっている。先端ビームナノ科学センターでは、高机能电子顕微镜群や超高强度极短パルスレーザー、独自の加速器など高品质な最先端机器を自前で持つことでこれらを自在に扱える技术を开発し、物质内の世界を探索して科学に贡献している。元素科学国际研究センターは、元素の新しい特性を见极め、それを生かしたものづくりを进めている。バイオインフォマティクスセンターは、生命科学情报解析用スーパーコンピュータを用いて、ゲノムの情报から疾患や医薬品に関する知见を得るための新しいデータベース开発へと进化を続けている。
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国际ハブ机能を高め発信力を强化
このような融合を促进し先进的な研究を生み出す环境づくりに一役买っているのが、共同研究の推进である。以前から国内外との共同研究に积极的に取り组んできたが、2010年に共同利用?共同研究拠点に认定されたことで年间の共同研究件数が拡大、そうした実绩が评価されて海外からも共同研究拠点としての认知が広がった。2018年には国际共同利用?共同研究拠点に认定され、国际共同研究件数がさらに飞跃的に増加している。辻井所长は「我々のような100人程度の规模でこれだけの分野をカバーし、各専门分野でも存在感を示しているところは世界でも珍しい」と、化研が世界から评価されているポイントを指摘する。
共同研究先もアジア圏から北米、ヨーロッパへと広がりを见せている。「今后は国际共同研究ステーションとして、各研究机関を结びつけ、异分野との连携?融合を拡大?深化させる、2方向のハブ机能を高めていきたいと思っています。国内外の研究连携を促进して新たな学际分野を开き、世界へ向けた発信力を强化することで研究所としてもう一段阶の飞跃につなげていきたい」と今后への意欲を示す。国际シンポジウムや研究会を継続的に开催するのをはじめ、上海の復旦大学内に「京都大学上海ラボ」を设置して最先端の化学研究を展开し连携强化を図るなど、国际ハブ环境充実へ向けた活动も推进中だ。また、アジア圏を中心に优秀な留学生の発掘と受け入れも进めており、募集には手ごたえを感じているという。
2018年に国际共同利用?共同研究拠点に认定されたことを机に、国际共同研究数が大幅に増加した
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特色を生かす人材育成と社会への発信
研究と并んで、教育?人材育成と社会的活动も化研の重要な柱である。教育については、大学院生はもちろん、ポスドクや公司研究者など若手研究者も积极的に受け入れている。多分野を行き来するうちに学际的な视点が育ち、理学、工学、农学、薬学、医学、情报学の6研究科11専攻から学生が集まるため学生同士のネットワークも広范囲に筑くことができるのは、幅広い分野をカバーする化研ならではのメリットである。所内の研究者が最新研究成果を発表する「化学研究所研究発表会」、大学院生が自主的に运営する「滨颁搁-顿セミナー」など交流机会も多い。「サイエンスのバックグラウンドが违い、个性豊かなメンバー同士が互いに交わることができる附置研ならではの恵まれた环境を、有効に活用してもらいたいと思っています」と辻井所长は语る。
活跃が期待される若手研究者と大学院生を表彰する京大化研奨励赏、京大化研学生研究赏の授与、海外派遣制度などを设けて组织的にサポートし、化研で业绩を积んだ优秀な人材が国外も含む外部の大学?研究机関へと採用されることも増えた。「研究者の泉源」として评価されるのと同时に、外部との人事交流が研究所の活性化にもつながっている。
所内の研究者の交流の场ともなっている「化学研究所研究発表会」
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社会に向けた発信には、いち早く本格的に取り组んできた。1993年度に初めて公开讲演会を実施したのを皮切りに、翌年度には京都大学各部局に先駆けて広报専门部署を设置、研究内容をわかりやすく発信する広报誌『黄檗』を创刊した。纪要のような硬い研究报告の域を超えて、他分野の研究者や学生、サイエンスに関心のある一般読者にも兴味を持ってもらえる読み物を心掛けている。
ユニークなアウトリーチ活动としては、90周年记念事业の一环として2016年から利用を开始した「碧水舎」がある。化研のある京都大学宇治キャンパスの一角にある、旧陆军の火薬库として建设され讲义栋にも使われたレンガ造りのレトロ建筑を、化研の沿革と研究业绩がわかる歴史展示室を设置した多目的集会施设として苏らせた。
京都大学化学研究所の90周年记念事业で整备された「碧水舎」。レンガ造りの外観が美しい
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一方、产学连携については、宇治キャンパス全体で地域とのつながりを深め、さまざまな课题を共有している。キャンパス内にあるエネルギー理工学研究所、生存圏研究所、防灾研究所との合同で年に4回、京都府南部の公司を招いて「宇治キャンパス产学交流会」を开催。また、2018年には、宇治地区インキュベーション支援室を立ち上げた。宇治キャンパスの研究者やベンチャー公司が、化研が持つ装置など多様なリソースを共同で利用できるよう整备し、研究成果の実用化?事业化支援を行っている。
「宇治キャンパス产学交流会」は、研究者と公司をつなぐ贵重な场
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「化研らしさ」で世界を変えていく
2004年、化研は部局としての个性を强く打ち出そうと、独自事业「化研らしい融合的?开拓的研究」プロジェクトをスタートした。研究分野の多様性を生かした融合的先端研究がより活発化するよう、40歳未満の若手研究者を対象として所内での异分野融合を奨励する取り组みだ。2012年度からは外国人枠を设け、海外の研究者との融合的研究によって国际的视野をもった若手の育成と研究アクティビティの向上を図っている。
自分の分野だけでなく、隣の分野、少し离れた関连分野にまで视野を広げ、新しいことを考え出していくのが、化研らしさである。たとえば、现在立ち上げを计画している、マテリアルズ?インフォマティクスもその一つである。化学は有机であれ无机であれ反応がベースになる。所内や共同研究で行われているさまざまな反応について、バイオインフォマティクスで培った技术や情报学の知见を生かしてデータベースを构筑し、ものづくりに生かそうというアイデアだ。
「化学は、物质や现象の本质的な解明をめざす基础研究に重きを置くことで、ものづくりからそれを使った社会システムの変革さえも可能にします。化研の高いアクティビティと多様性、连携?融合研究の伝统を基盘に、新たな学术分野の开拓、未踏科学への挑戦に向けて踏み出していきたいと思います」(辻井所长)
时代の要请に柔软に、积极的に対応して未知の领域を开拓し、地球社会の课题解决に贡献することをめざして。世界的レベルの研究を推进し、今后も新たな知への挑戦を続けていくことが、化研の使命である。
- 物质や现象の本质的な解明をめざす基础研究を重视
- 化学を中心に幅広い学问分野と连携する「多分野共同体」
- 异分野融合で新たな学术分野を开拓し地球社会の课题を解决
「京大化学」が、外的な制约にとらわれない自由な発想のもと発展していくために、寄付をお愿いしております。本记事と関连する基金をご绍介しますので、ぜひともご支援を赐りますようお愿い申し上げます。







